チーズプロフェッショナルの道 その27
『チーズの教本』第 2章 地域別チーズ⑦ アメリカ/オセアニア/モンゴル&インドのチーズ
長らく続いた『チーズの教本』の国別チーズ紹介もいよいよ最後の回となりました。最後は、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、インド、モンゴルです。
日本においては、これらの国々はフランスやイタリアに比べるとナチュラルチーズのイメージがありませんが、実は日本のチーズ輸入量1位はオーストラリア、2位はニュージーランド、3位がアメリカ、と言うように我が国にとっては極めて深い関係がある国々なのです。
🌟 アメリカのチーズ
現在アメリカは、世界一のチーズ生産量を誇るチーズ大国ですが、その歴史はあまり長くはありません。1620年以降、イギリスを始めヨーロッパの国々から移民と共に様々なチーズがもたらされ、各地域で展開していきました。現在「アメリカンオリジナルチーズ」と称されるものの発祥はその辺りです。その後国内需要に対応するように大量生産がされるようになり、技術の進歩に伴って2006年ごろからは他国への輸出も大規模になり始めました。
アメリカは品質基準がしっかりしており、農務省(USDA)と食品医薬品局(FDA)が一貫して厳しい管理をしています。
アメリカには統一された分類法が存在していませんが、ヨーロッパの伝統的な製法をベースにした独自のチーズ開発も行われており「スペシャリティチーズ」と呼ばれています。大規模工場で大量生産されるチーズに対しオリジナリティと付加価値をつけたチーズが「スペシャリティチーズ」で、
- Artisan Cheese (アルチザンチーズ)-職人の技術を重要視したもの
- Farmstead Cheese(ファームステッドチーズ)-自家農場の乳のみを使用したもの
- Organic Cheese(オーガニックチーズ)-アメリカ政府のガイドラインに沿って認定されたもの
などの区分があり、一つのチーズがそれぞれの区分を兼ねることあります。
🇺🇸北東部のスペシャリティチーズ
最も北に位置するメイン州からヴァージニア州一帯。家族経営的な小さな単位で小型のクリエイティブなものが多く作られています。ニューヨークシティもここに入る関係から、個性の強いものも多く輩出されています。チャットGPTでチェックしてみると、
ヴァーモントチェダー: バーモント州で作られるチェダーチーズで、濃厚でクリーミーな味が特徴です。
ニューヨークステートチーズ: ニューヨーク州各地で作られるチーズで、特にクリームチーズやブルーチーズが有名です。
ペンシルベニアデッチーズ: ペンシルベニア州の特産品で、アルタモントやランカスター郡で作られるチーズがあります。
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だそうで、伝統的なものをベースに改良・ローカライズしたタイプが多いようです。
🇺🇸中部のスペシャリティチーズ
アメリカ中央北部、ウィスコンシン州を中心とするエリアで、牛乳製ハードチーズがメインになっています。チャットGPTでチェックしてみると、
Wisconsin Cheddar: ウィスコンシン州で生産されるチェダーチーズは非常に評価が高く、特にシャープな味わいが特徴です。
Missouri Washed Rind Cheese: ミズーリ州で生産される洗浄リンドチーズは、独特の香りと風味を持っています。
Iowa Maytag Blue: アイオワ州で作られるメイタグブルーチーズは、豊かな青カビとクリーミーな質感が特徴です。
Minnesota Cheese Curds: ミネソタ州で人気のチーズカーズは、新鮮でサクサクした食感が楽しめるチーズスナックです。
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かなり幅広く、様々なタイプが流通していることが窺い知ることが出来ます。
🇺🇸西部のスペシャリティチーズ
オレゴン州からカリフォルニア州一帯の地域で、アメリカワインの最大の生産地でもあります。チャットGPT上では、
California Jack Cheese: カリフォルニア州で広く生産されるジャックチーズは、マイルドでクリーミーな味わいが特徴です。
Oregon Blue Cheese: オレゴン州で生産されるブルーチーズは、豊かな青カビと深い味わいが特徴です。
Idaho Sheep’s Milk Cheese: アイダホ州で作られる羊乳チーズは、独特の風味とクリーミーな質感があります。
Washington Cougar Gold: ワシントン州で有名なクーガーゴールドは、熟成されたチェダーチーズで、クリーミーで濃厚な味わいが特徴です。
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となっており、乳種、製法とも個性的なものが多いようです。
🇺🇸アメリカンオリジナルチーズ
アメリカンオリジナルチーズとは、アメリカ発祥のチーズを指し、ベースは既存のものであっても製法に独自性があれば「オリジナル」と定義され、スペシャリティチーズにも含まれます。
🧀コルビー
ウィスコンシン州コルビーの発祥の熟成1-3ヶ月のハードチーズ。チェダーに似てマイルドな味わい。アナトーでオレンジ色に着色される。
🧀モントレー・ジャック
カリフォルニア州モントレー発祥の熟成1-3ヶ月のハードチーズ。比較的柔らかくスライスにも向く。アイボリーの色味が特徴で、あっさりしたマイルドな味わい。
🧀コルビー・ジャック
上記コルビーとモントレー・ジャックを細断して混ぜ合わせて固めたもの。オレンジとアイボリーのマーブル状の色調になり、見た目が美しい。それぞれの単品よりもやや濃厚な味わい。
🧀ペッパー・ジャック
モントレー・ジャックスパイスをミックスしたチーズ。加熱に向いており伸びも良く、アメリカではピザに頻繁に使用される。
🌟 オーストラリアのチーズ
2021年の日本のチーズ輸入実績で1位のこの国。酪農及びチーズ作りに向いている地域は、ヴィクトリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州、タスマニア州等の機構の穏やかな南東の地域です。第二次対戦後、ヨーロッパ各国からの移民が進み、チーズのバリエーションも増えて行った結果、「世界のチーズの縮図」と呼ばれるようになりました。
昨今は、乳製品は国家事業になっており、大規模工場でチェダー等のハードチーズが大量生産されています。
オーストラリアのチーズの分類
- チェダーとチェダータイプ
- マイルド 3ヶ月熟成。穏やかなフレーヴァー。
- セミマチュアド 3-6ヶ月熟成。しなやかな生地とリッチな味わい。
- マチュアド 6-12ヶ月熟成。濃厚な味わいでコクが出る。もろい生地感。
- ヴィンテージ 12-24ヶ月熟成。生地は硬くもろい。シャープで個性的な味わい。
- フレッシュタイプ ヨーグルト状やホイップ状のもの。
- ストレッチ・カードタイプ パスタフィラータ。モッツァレッラ等。
- 白カビタイプ カマンベールやブリ等がモチーフになっているものが多い。
- ウォッシュタイプ フランスのものに倣う。
- 青カビタイプ ヨーロッパ各国のブルーチーズに倣う。
- セミハード/アイチーズタイプ チーズアイを持つものを指す。エメンタール、グリュイエール等に倣う。
- ハードタイプ グラインドして使うもの。パルミジャーノレッジャーノのイメージ。
🇦🇺アルチザンチーズ
大量生産が得意なオーストラリアにも、伝統的な製法や手作業によって作られるアルチザンチーズがあります。オーストラリアでは、そういった少量生産のチーズを作る職人を育てるための専門教育機関「オーストラリアスペシャリストチーズ製造者協会」と言う組織まであります。
ここでは、
- チーズの品質の基準の設定
- 教育と情報提供
- マーケティング及び販売促進指導
- 業界の代表的役割
等の様々機能を果たしています。
🌟 ニュージーランドのチーズ
ニュージーランドは、日本のチーズ輸入国第2位で日本との関わりが大変深い国ですが、この国のチーズ生産量の95%が輸出に回されると言う国にとって極めて重要な産業になっています。
この南半球の島国は、年間放牧が可能で気候的に酪農に適しており、ヨーロッパからもたらされた技術によって様々種類のチーズが生産されています。その数は400種と言われています。
🇳🇿エグモント
この国のチーズ発祥の地に近い山の名前に由来。ゴーダに似たチーズで、細断したカードに塩を混ぜて作る、外皮の無いリンドレスタイプ。プロセスチーズの原料、ピザ用に多く用いられる。
🌟 モンゴルのチーズ
モンゴルを含む西アジアの地域は、「酸加熱凝固」と呼ばれる乳酸発酵した乳を加熱して作るチーズがメインとなっています。それは、
- 乳
- 乳酸を加えて→ヨーグルトに
- 撹拌して一部がバターになり、その残りのバターミルクを、
- 加熱→脱水→加塩→乾燥
と言うプロセスを通してチーズが出来上がります。
またモンゴル独特のチーズ作りの特徴は、
- 脱脂乳の使用
- レンネットは不使用、酸乳を凝固剤として使用
- 出来立てを即座に乾燥する
と言う3点です。脱脂の仕方はふた通り。
1、乳を加熱しながら柄杓で掬って落とすを何回も繰り返し、一晩静置して翌日表面に浮いた塊を救う方法→ウルム
2、乳を無殺菌のまま静置し、浮き上がった脂肪層を取り出す→ジョーヒー
ウルムもジョーヒーもそのまま食べたり、様々な物を加えて食べたり、モンゴルでは多用される大切な食材になっています。
🇲🇳アーロール/ホロート
ウルムを取った後の脱脂乳を加熱し、酸乳(ヨーグルト)を加えながら乳清を取り除いて脱水。それを成形して天日に干して作る。非常に硬く酸味が強い保存食。乳茶に入れて柔らかくして食べたり、そのまましゃぶったりして食べる。
🇲🇳スーン・ホロート
ウルムまたはジョーヒーを除去した脱脂乳(エードスンスー)を強火で加熱。ホエイを除いて乾燥させたものがスーン・ホロート。 若干パスタフィラータのような生地感。
🇲🇳ビャスラグ/エーズギー
脱脂乳に酸乳(ヨーグルト)を凝固剤として加えて作ったチーズ。ビャスラグは凝固したものを、加熱、脱水、乾燥させたタイプ。エーズギーは、凝固したものを加熱濃縮したタイプ。
🌟 インドのチーズ
インドの乳製品の歴史は意外に古く、BC1,200年には祝い事に乳製品が用いられたと言う記録が残っているそうです。
現在のインドのチーズ作りの特徴は、植物由来の有機酸を凝固剤に使用する事です。伝統的にはライムが使われていたようですが、現代的には粉末調のクエン酸や酢酸が用いられます。レンネット凝固は用いられず熱凝固も行われ、出来立てをすぐに食べるのが特徴。
🇮🇳チェナー/パニール
乳を沸騰するまで加熱、それに酢酸またはクエン酸を投入して凝固させる。それに圧力をかけて脱水したフレッシュチーズがチェナー。それをさらに30分ほど強力に脱水したものがパニール。
多くの料理に利用されるが、インドらしくカレーと一緒に煮込まれることもある。