チーズプロフェッショナルへの道 その25
『チーズの教本』第 2章 地域別チーズ⑥ ドイツ/オーストリア/ベルギー/オランダのチーズ
『チーズの教本』の国別チーズ紹介の第6弾はドイツ、オーストリア、ベルギー、オランダです。オランダは日本でも有名かつ広く普及しているゴーダの発祥の地なので、チーズのイメージがある程度ある人も多いかもしれませんが、ドイツに関しては殆どイメージが皆無という方が大半だと思います。
しかしながら、世界統計的に見るとドイツは国別チーズ生産量でアメリカに次いで第2位、さらに輸出量、輸入量ともに世界一というチーズ大国なのです。
🌟 ドイツのチーズの分類と生産量
ドイツの分類は6種類に分かれており、タイプによってかなり生産量が異なります。『チーズの教本 2023〜2025』には2016年の統計が紹介されおり、それをまとめます
タイプ | 原語 | 例 | 生産量 |
ハード | Hartkäse | アルゴイヤー・エメンターラー | 21万t |
セミハード | Schnittkäse | ゴーダ | 70万t |
セミソフト | Halbfeser Schnittkäse | エーデルピルツ ブッターケーゼ チルジット | 6万t |
ソフト | Weichkäse | カマンベール ヴァイス・ブラウケーゼ ロマドゥール | 16万t |
フレッシュ | Frischkäse | クワルク | 82万t |
サワーミルクチーズ | Sauermilchkäse | ハントケーゼ ハルツァーケーゼ | 3万t |
🌟 ドイツの主なg.U.チーズ
🧀アルゴイヤー・エメンターラー
80-90kgという大型の牛乳製ハードチーズ。3ヶ月以上の熟成。
🧀アルゴイヤー・ベルクケーゼ
15-50kgの牛乳製大型ハードチーズ。4ヶ月以上の熟成。
🌟 ドイツの独特のチーズ
🧀クワルク
ドイツでは極めて流通量の多い有名なフレッシュチーズ。乳を乳酸醗酵させた後に酢酸とレンネットを加えて凝固させてホエイを抜く。クリーム添加のものやハーブやスパイスを加えたものもある。フランスのフロマージュブランに似ている。
- 原語表記:Quark
- 乳種:牛
- タイプ:フレッシュ
- 熟成期間:なし
- 形状:糊状 プラスチック容器入り
- 固形分中乳脂肪量(MG):0-40%
🧀ザウアーミルヒケーゼ
ハルツァーケーゼ、マインツケーゼ等様々呼び名がある。脱脂乳の乳酸発酵カードを脱水して作られる。黄色っぽい生地に菌の発酵による独特の匂いがある。
半透明でモッチリした食感の小型チーズ。
- 原語表記:Sauermilchkäse
- タイプ:該当なし
- 乳種:脱脂乳
- 熟成期間:4日ー4週間
- 形状:小さな円盤形や団子、棒形
- 固形分中乳脂肪量(MG):約10%以下
🧀カンボゾーラ
カマンベールとゴルゴンゾーラを合わせたネーミング。表面が白カビ、中に青カビを植えて熟成させる。このようなタイプのチーズを「ヴァイス・ブラウ・ケーゼ」と称している。
- 原語表記:Cambozola
- タイプ:白カビ+青カビ
- 乳種:牛
- 熟成期間:不明
- 形状:直径24cm 高さ 4cm 重さ2.2kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):最低70%
🧀モッツァレッラ
ドイツモッツァレラとも称され、イタリアのモッツァレッラとは全く異なる。パスタフィラータタイプのリンドレスチーズ。
- 原語表記:Mozzarella
- タイプ:ハード(パスタフィラータ)
- 乳種:牛
- 熟成期間:不明
- 固形分中乳脂肪量(MG):約42%
🌟 オーストリアの主なチーズ
オーストリアは、周辺をチーズ大国に囲まれながら政府が力を入れて質の良いチーズの製造を奨励しています。
🧀チローラー・グラウケーゼ
- 原語表記:Tiroler Graukäse
- 産地:チロール地方
- タイプ:ハードタイプ
- 乳種:牛(脱脂乳)
🌟 ベルギーのA.O.P.チーズ
ベルギーはオランダから独立した国という経緯もあり、チーズ作りには関してはオランダの影響を強く受けていますが、地政的にフランスとも近いことからフランスの影響も受けています。
ベルギーでは伝統的に修道院でチーズやビールが作られて来ましたが、ベルギー産のA.O.P.(原産地名称保護)取得チーズはフロマージュ・ド・エルヴの1種類です。
🧀フロマージュ・ド・エルヴ
「マルセイユ石鹸」との別称もある。何度も洗って熟成させる濃厚なウォッシュチーズ。表面はネバネバしており、塩気も強いが、後味に甘味が残るのが特徴。400gのこのチーズを8週間以上洗って熟成させたものは「ルムドゥー」と呼ばれ高貴なチーズとされる。最高ランクのものはビールやジンで洗う。さらに熟成をさせたものは「ピカン」。
- 原語表記:Fromage de Herve
- タイプ:ウォッシュ
- 乳種:牛
- 熟成期間:5、6週間-2ヶ月
- 形状:立方体 直方体 重さ 50g-400g
- 固形分中乳脂肪量(MG):45%
🧀シメイ
ビールを製造しているスクールモン修道院で開発されたチーズ。ここで作られるビール「シメイ」で洗って仕上げるのは「シメイ・ブルー」「シメイ・ルージュ」などがある。最もポピュラーなのは「シメイ・クラシック」。
- 原語表記:Chimay
- タイプ:ハード
- 乳種:牛
- 形状:円盤形 重さ300g程度-3kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):45%
🌟 オランダのB.O.B.チーズ
オランダは元々土地が低く、土壌が不安的な場所であったところ、10世紀以降この地に入ってきた開拓者たちが干拓をし、やがて酪農業が盛んになって行きました。彼らの努力もあり、15世紀の頃にはヨーロッパ全体でもオランダのチーズは評価が高まり、輸出が増えて行きました。それに伴い輸出に適したチーズの開発が進み、やがてそれが江戸時代の日本にも届くようになります。1691年、徳川綱吉がオランダのチーズ(乾酪)、「アイダム乾酪(エダム)」と「サフラン乾酪(ゴーダ)」を献上するようにとの命が下ったとの歴史が残っています。
現在でもチーズはオランダにとって重要な輸出産品であるためCOKZ(乳製品品質管理中央会)と呼ばれる機関が、厳しく品質の管理をしています。
🧀ゴーダ
名称はロッテルダムそのば小さな村に由来し、オランダ語ではハウダ。カードウォッシュ製法で作られる、オランダを代表するハードチーズ。オランダで製造されるチーズの50%以上はこのゴーダで、乳種も牛、山羊、羊など様々なものが使われ、スパイス・ハーヴをブレンドしたスパイス・ゴーダなど、多くの種類が存在する。
表皮にはナタマイシンなどの添加物を使用した黄色いワックスで覆われているものが多い。黒いワックスでコーティングされているものは熟成期間の長いタイプ。
工場で量産されるタイプは四角い形をしており、プラスチックフィルムで密封して熟成されるため表皮の無いリンドレスゴーダとなる。
- 原語表記:Gouda
- タイプ:ハード
- 乳種:牛(殺菌)
- 熟成期間:30-48ヶ月
- 形状:円盤形 直径35cm 高さ10-12.5㎝ 重さ約10kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):48%
🧀エダム
オランダチーズの生産の20%を占める、ゴーダに次ぐオランダを代表するハードチーズ。輸出用にも多く生産されており、輸出用のものは赤いコーティングがされいる。
生地は薄い黄色で引き締まっており、マイルドな味わいと後味の酸味が特徴。
- 原語表記:Edam
- タイプ:ハード
- 乳種:牛(殺菌)
- 熟成期間:20日-1年以上
- 形状:上下平な球 直径14cm 高さ14㎝ 重さ約1.8kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):40%
🧀ミモレット
アナトー色素によりオレンジ色に着色されている。フランスにも同じチーズがあるがこちらがオリジナル。現地では「コミッシーカース」と呼ばれいてる。様々な熟成期間のものが出回っており、熟成が進むほど旨味が強まり、カラスミのような味と表現され人気がある。
- 原語表記:Mimolette
- タイプ:ハード
- 乳種:牛(殺菌)
- 熟成期間:最低180日
- 形状:上下平な球 直径17.5cm 高さ12㎝ 重さ約4kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):40%
🧀マースダム
NIZO(オランダ酪農研究所)が1970年に開発したハードチーズ。スイスのエメンターらーのようにプロピオン酸菌によるチーズがアイがある。しっとりとした味わい。
- 原語表記:Maasdam
- タイプ:ハード
- 乳種:牛(殺菌)
- 熟成期間:90-180日
- 形状:中央が膨らんだ円盤形 直径35cm 高さ12㎝ 重さ10kg-12kg
- 固形分中乳脂肪量(MG):45%