チーズプロフェッショナルへの道 その18       

 『チーズの教本』第 2章 地域別チーズ② イタリアのD.O.P.チーズ パートⅠ 北部その1

イタリア北部


 『チーズの教本』では、フランスに関しては「北部」や「南部」等の大きな括りの次に「〜地方」と言った中間レベルでのカテゴリー分けがされていますが、次のイタリア以降はその中間的な括りがありません。すなわち、イタリアに関する地域分類は「北部」と「中・南部」しかありません。この辺りからしても、日本のチーズはフランスがベースになっている事が良く分かる分けですが、各チーズのスペックに関して産地表記をする事にします。
 このパートⅠでは、イタリア北部のチーズの紹介をします。 

🌟 イタリア北部 その1

 イタリアのチーズは様々な地域で様々なタイプが造られていますが、その多くが北イタリアに集中しています。その大きな理由は、北イタリアには高地のアルプス山脈が存在していること、さらにスイスやフランスといった各々のチーズ文化が発達した国との国境を接している事が大きな理由です。

🧀フォンティーナ

干し草を餌にしたヴァルドスターナ種の牛の乳から造られるハードチーズ。6-9月の間に標高2,000m以上の地域で放牧された牛から作られるものは「d’Alpeggio」と称される。また製造は1日2回でサイレージや発酵飼料を使用する事は禁止されている。
 ミルクの香りが豊かなハードチーズで、このチーズを使ったチーズフォンドュは「フォンドゥータ」と呼ばれています。

  • 原語表記:Fontina
  • 産地:ヴァッレ・ダオスタ州全域
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳、無殺菌)
  • 熟成期間:最低80日
  • 形状:直径35-45cm、高さ7-10cm、重さ7.5-12kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低45%
By Luigi Chiesa – Own work, CC BY 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=20982252

🧀ブラ

 ピエモンテ州はイタリアの中でチーズ生産量と種類の多い州であるが、その中でこのBraは最も多く作られる。熟成が45日以上のものはテーネロと呼ばれソフトタイプ、180日以上のものはドゥーロと呼ばれるハードタイプ。「ブラ」は世界的に有名なチーズのお祭りが開催される町名。
 しなやかな生地とミルキーかつ若干スパイシーな味わいが特徴。

  • 原語表記:Bra
  • 産地:ピエモンテ州
  • タイプ:ソフト(テーネロ)/ハード(ドゥーロ)
  • 乳種:牛(全乳)、山羊または羊の乳を20%まで加える事が可能
  • 熟成期間:最低45日
  • 形状:直径30-40cm、高さ5-10cm、重さ6-9kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低32%
By F. D. Richards from Clinton, MI – Bra Duro, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36189552

🧀カステルマーニョ

 1996年にD.O.P.を取得したカステルマーニョは、イタリアD.O.P.チーズの中でも最も生産量の少ない希少なチーズの一つ。伝統的には湿気のある洞窟の中で作られていたが、現在もその環境に近い湿度と温度が管理され製造される。カステルマーニョは製造の中心となる村の名前。
 熟成が進むと自然と青カビが発生。外観の基調色はアイボリーながら熟成と共に、ピンクがかったり黄土色に変化し、シワが出来る。
 味わいは少しスパイシーで個性が強く濃厚な味。

  • 原語表記:Castelmagno
  • 産地:ピエモンテ州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳または部分脱脂、無殺菌)、山羊または羊の乳を20%まで加える事が可能
  • 熟成期間:最低60日
  • 形状:直径15-25cm、高さ12cm-20cm、重さ2-7kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低34%
By Marco Plassio, Boutega Ousitana, Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=14696413
🧀ラスケーラ

 ラスケーラは発祥となった村の名前。ホールの形状は家畜の動物が運びやすいように角の丸い四角い形状。外皮にはキャンバス地の模様がつく。
 あまり長期熟成に向くタイプではなく、12ヶ月以内のものが多いためセミハードくらいの硬さののもの流通が多い。生地は弾力があり、豊かなミルクの風味と若干の酸味、コクがあり、優しい味わい。

  • 原語表記:Raschera
  • 産地:ピエモンテ州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳)、少量の山羊または羊の乳を加える事が可能
  • 熟成期間:最低30日
  • 形状:円形=直径30-40cm、高さ6-9cm、重さ5-9kg、角形=一辺28-40cm、高さ7-15cm、重さ6-10kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低32%
By F Ceragioli – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=36961562
🧀ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ

 起源は古くローマ時代よりも前に作られたと言われる。名前のロビオラの由来はラテン語Robium(銅褐色)で、表面が若干赤みを帯びるところから来ている。ロッカヴェラーノは発祥の村の名前。生産量は少なく希少なチーズ。
 山羊乳100%のロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノは表皮は薄く、中は流れるほど柔らかい。味わいはクリーミーかつ濃厚で個性がある。

  • 原語表記:Robiola di Roccaverano
  • 産地:ピエモンテ州
  • タイプ:酵母
  • 乳種:山羊(無殺菌)
  • 熟成期間:最低4日
  • 形状:直径10-14cm、高さ2.5-4cm、重さ250-400g
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低40%
By Tecla.b – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=56474439
🧀トーマ・ピエモンテーゼ

 11世紀に記録があるほど歴史のある北イタリアの伝統的ハードチーズ。熟成に従いクリーム色から象牙色の生地に変化。中期熟成のものが多く流通するセミハードタイプが中心。
 ミルクの香り、酸味、熟成の旨み、バランスの取れたスタンダードなセミハードチーズ。

  • 原語表記:Toma Piemontese
  • 産地:ピエモンテ州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳または部分脱脂)
  • 熟成期間:大型=最低60日、小型=最低15日
  • 形状:直径15-35cm、高さ6-12cm、重さ1.8-9kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):全乳タイプ=最低40%、部分脱脂タイプ=最低20%
By Pohoua – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=133906026
🧀ビット

 ビットは生産量及び流通量共に少ないロンバルディア州産のハードチーズで、生産は6月1日から9月30日という限られた時間のみ。長期熟成にも耐えられ、長期になると白色から黄色へ変化する。熟成がある程度進んだものは、旨み及びコクが濃くパンチの効いた味わいで、イタリアでは人気がある。
 名前は、ローマ時代に北イタリアに進出したケルト人がもたらした製法が、ケルト語のビトゥ(ベッドの意味)という名だった事に由来すると言われる。

  • 原語表記:Bitto
  • 産地:ロンバルディア州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳、無殺菌)10%まで山羊乳を加える事が可能
  • 熟成期間:最低70日
  • 形状:直径30-50cm、高さ8-12cm、重さ8-25kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低45%
By Distretto Agroalimentare di Qualità della Valtellina – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40697774
🧀ヴァルテリーナ・カゼーラ

 このチーズが作られるロンバルディア州の渓谷の名前がヴァルテリーナ。脱脂乳から作られるため味わいが軽やか。クセが無くて食べやすいため、さまざまな食べ方が可能。あまり熟成をさせずにセミハードの状態で消費される事が多く、年間を通して生産される。最初は白く徐々に麦色へと変化。
 カゼーラはラテン語「Caseus」に由来と言われる。

  • 原語表記:Valtellina Casera
  • 産地:ロンバルディア州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(部分脱脂 無殺菌)
  • 熟成期間:最低70日
  • 形状:直径30-45cm、高さ8-10cm、重さ7-12kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低34%
By Distretto Agroalimentare di Qualità della Valtellina – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40695698
🧀ゴルゴンゾーラ

 イタリアを代表する青カビチーズ、と同時に世界三大青カビチーズと言われるほど有名なチーズ。青カビの刺激の強いピカンテとマイルドなドルチェの2種がある。ゴルゴンゾーラは村の名前。伝統的には移動で疲れた牛(ストラッコ)の乳(ストラッキーノ)を使っていた。
 有名かつ一般に広く出回っているのはピカンテの方で、塩気、青カビの刺激、ともに強いパンチのある味わい。厚く柔らかいピンク色がかったオレンジ色の表皮。生地はアイボリーで、濃い緑色のカビが豊かに入っている。 
 一方のドルチェの方は、ホールチーズの外観は同様ながら中身のカビの色は青というよりむしろ黄緑に近く、ピカンテに比べてカビの全体量は少ない。味わいはマイルドでクリーミー。

  • 原語表記:Gorgonzola
  • 産地:ピエモンテ州、ロンバルディア州
  • タイプ:青カビ
  • 乳種:牛(全乳 殺菌)
  • 熟成期間:大型=最低50日、中型=最低80日、小型=最低60日
  • 形状:直径20-32cm、高さ13cm、重さ6-13kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低48%
By Ramagliolo9 – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=86076963
🧀タレッジョ

 イタリアを代表するウォッシュチーズで日本でも広く出回っている。タレッジョは北イタリアの渓谷の名前。
 塩水で洗われた外皮はウォッシュらしい独特の発酵臭を纏うが、味わいはクリーミーで滑らか、極めて優しく穏やかなウォッシュチーズと言える。
 熟成につれてコクと旨みが強くなる。 

  • 原語表記:Taleggio
  • 産地:ピエモンテ州、ロンバルディア州、ヴェネト州
  • タイプ:ウォッシュ
  • 乳種:牛(全乳)
  • 熟成期間:最低35日
  • 形状:一辺20cm程度の四角、高さ4-7cm、重さ1.7-2.2kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低48%
By Jorchr – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=75638123
🧀プッツォーネ・ディ・モエーナ

 プッツォーネは“臭い”という意味のイタリア語で、モエナはこのチーズが作られる谷の名前で、その名の通り強烈な匂いを放つ。塩水で表面を洗いながら発酵させるためにこのような匂いが発生する。
 アルパイン種の牛乳を使用。生地は比較的柔らかく滑らか。香りに比して味わいは極めて濃厚。 

  • 原語表記:Puzzone di Moena
  • 産地:トレンティーノ・アルト・アディジェ州
  • タイプ:ハード
  • 乳種:牛(全乳または部分脱脂 無殺菌)
  • 熟成期間:最低90日
  • 形状:直径34-42cm、高さ9-12cm、重さ9-13kg
  • 固形分中乳脂肪量(MG):最低45%
By Ferruccio Zanone from Biella, Italia – Gemellaggio (Per gustare premere L), CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=57796115


 

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