チーズプロフェッショナルへの道 その10
『チーズの教本』第1章 タイプ別チーズの製造工程②
現在(2024年3月)の日本チーズプロフェッショナル協会の分類で「ハードチーズ」とされているものは、かつては「セミハード」と「ハード」に別れていました。どちらも製造工程に必ず熟成期間が入るタイプのチーズですが、セミハードは水分が38-46%となるチーズで、種類も多く汎用性の高いナチュラルチーズでのに対し、ハードは最終的な水分が38%以下となるような極めて硬いチーズの事を指していました。
ハードチーズはソフトチーズよりもレンネットを多めに投入し酸度をあまり上げないようにしながら水分の少ないチーズを作ります。ハードチーズの特徴は、
- カードのカッティングからホエイ分離までのシネレシス工程に3つの大きな分類があること
- 圧搾による成形工程がある事
- カビや酵母などの力を借りず乳酸菌の働きによって長い時間をかけて熟成を進める
という3つが挙げられます。以下、シネレシス工程の違いによる製法の違いを記述します。
🌟ハードチーズ ゴーダの製造工程
カードカッティング後、ホエイを同温のお湯に置き換える事により(カードウォッシュ)ことによりカードのpHの低下をある程度抑え、やや水分の多い(約40%)のチーズを作ります。カードウォッシュを行う事により、乳糖が減少し雑菌の餌を抑えることが出来ます。この工程を経て最終的に出来上がるチーズは、しっとりとしたマイルドな味わいのものになります。
🌟ハードチーズ チェダーの製造工程
カードカッティング後、すぐに全てのホエイを排出してしまうのが大きな特徴です。こうする事により、カード内のpHが下がり酸度が下がりますが、さらにバットの底で適度な大きさにカットしたカードを重ねてシネレシスを進めると、水分が少なくやや酸味のあるササミ状のカードの塊が出来ます(チェダリング)。さらにそれを細かく細断し(ミリング)型に詰め成形します。
工程上、他の二つのハードチーズとの大きな違いはミリングをした後に塩を加えるところで、こうする事により熟成初期の雑菌汚染のリスクを軽減することが出来ます。
最終的に出来上がったチーズは水分は35%程度となり、やや酸味がありながら脆い組織の生地のチーズとなります。
🌟ハードチーズ 加熱圧搾チーズの製造工程
カードをスピーノ等で米粒大くらいの細かいカードに細断し、撹拌しながら55℃以上まで温度を上げる事が大きな特徴で、この工程はクッキングと呼びます。このクッキングの目的は雑菌の防止ですが、この高温に耐えられた強い乳酸菌のみが残る事になります。
またこの工程の結果シネレシスが進み、ゴーダよりも強いカードの収縮が見られます。この加熱圧搾の代表格であるパルミジャーノレッジャーノでは55℃、スイスの極めて硬質なチーズスプリンツでは54-57℃くらいまで加温します。