チーズプロフェッシャナルへの道 番外編

 チーズとの出会いの原点とその後

 (プロセスチーズの定番 6P Amazonより)

 現在は、チーズと一生付き合って行く覚悟を決めているふぉるまじ男ですが、最初にチーズと出会った子供の頃はチーズが大嫌い。それがどのように現在のように変化をしていったのか。あの時のチーズと今目の前にしているチーズとの間に何があり、いつどのように変化して行ったのかを振り返ってみます。

🌟人生最初のチーズとの出会い

 ふぉるまじ男は昭和40年生まれ。私たちの世代の人は、人生で最初にチーズと出会うのは殆どの人が給食だったと思います。私はその給食のチーズが大嫌いで、チーズが献立に出てくるたびに友達に上げていました。
 まずはあの臭いが受け入れられず、さらに中途半端に柔らかい食感にも気色の悪さを感じました。それが約半世紀が経過した今、チーズに運命的な縁を感じ一生付き合う誓いを立てるまでの事態に発展しているわけですが、かつてのあの大っ嫌いだった「チーズ」と今愛してやまない「チーズ」との間に何があるのでしょうか?
 当然ながら、過去と現在を正確に比較することは出来ない訳ですが、最も大きな違いは、プロセスチーズとナチュラルチーズとの違いと言えます。

🌟罪深きプロセスチーズ

 50年以上も生きて来て、チーズの勉強をし始めてから始めて知った事ですが、チーズには大きく分けてプロセスチーズとナチュラルチーズがあります。あの小学校の給食に出て来たものはプロセスチーズ、一方現在日々向き合っているものはナチュラルチーズです。
 その違いは、細かい部分はさておきザックリ定義すると、ナチュラルチーズはチーズの中で微生物や酵母が生きていて、時と共に熟成等の変化があるチーズ。それに対し、プロセスチーズは、ナチュラルチーズを工場で一度加熱して再凝固させたもので、すでに元のナチュラルチーズの持つ本来の性質が変化し固定化しているため時間と共に変化することはありません(保存状態の悪さによるカビの発生や腐敗は別)。

 今でこそ、プロセスチーズは様々なメーカーさんの努力もあってバリエーションも非常に多く、またとても食べやすく美味しいものが増えてきましたが、昭和の頃のプロセスチーズはそれほど気の利いたものではありませんでした。その状況については、日本におけるチーズの歴史について若干コメントする必要があります。

 一般民衆の食べる食品として日本にチーズが紹介されたのは戦後のアメリカ占領下でした。当時の食糧不足の戦後日本にあって、「欠食児童を無くし、健やかに成長することを目的にした学校給食」に牛乳と共にカルシウム摂取のための合理的な食品としてプロセスチーズが取り入れられ、国内に普及して行ったという経緯があります。その時代プロセスチーズは恐らくそ現在のものよりも食感や風味の点で劣後していたと思われます。

 その後、1970年代になってピザの普及などを経て漸くナチュラルチーズも国内で普及し始めました。さらにバブル前後のイタリアンブームなどを経て1990年代にナチュラルチーズはプロセスチーズの消費を上回るようになりました。言い換えるとそれまではあの忌まわしき昭和の小学校のプロセスチーズの系譜が日本における「チーズ」のメインストリームでした。
 プロセスチーズとナチュラルは同じく「チーズ」と称していながら実は全く違う食べ物なので、以前は大嫌いだったものが今は大好きになるのも納得です。自分の世代以前は、恐らく自分のような経験を持っている人も少なくないのではないかと想像しますが、平成以降に生まれた方々は、チーズとの出会いはナチュラルチーズであるケースも多いと思われ、自分のような経験をしている方はあまり居ないのではないかと思います。

🌟ナチュラルチーズとの本格的な出会い

 さて、そんなふぉるまじ男が、カマンベールやモッツァレッラと言った今や国内でも定番化しているアイテムを通してナチュラルチーズに最初に出会ったのは恐らく1980年中頃と思われますが、現在に至る衝撃的は出会いと本格的なナチュラルチーズと向き合い始めたのは2021年です。
 私は、2012年から2017年までの5年間を海外でビジネスチャレンジをしており(ミャンマー→タイ)、2017年に帰国した際はその時の嫁(ハイ、バツイチです 泣)の強い希望により東京都港区に居を構えました。海外生活の事業不調によりすっかりキャッシュレスになっていた私にとっては、港区はハードルが高すぎ「絶対無理!」と都多寡をくくっていたのですが、信じられないような安い賃貸マンションが見つかってしまい、まんまと港区民になってしまいました。
 港区は、夥しい数の大使館があったり、インターナショナルスクールも多く存在しているため、まぁ外国人居住者が多い。アメリカはもちろん、オーストラリア、イタリア系が特に目立つような気がします。そんな環境下、元々友人の一人が、麻布十番に新しく出来るイタリアのチーズ&生ハム専門店で働くから遊びに来いという。まぁ近くだし、折角なので冷やかしメインで顔を出してみるか、と思って行ったのが2021年の4月だったと思います、初めて見るパルミジャーノレッジャーノのホールや、その熟成庫を模した売り場の造形に極めて大きなインパクトを受けて、すっかり気に入ってしまったのですね。
 中でも、見た目からして様子のおかしいドロドロチーズ「ゴルゴンゾーラ ドルチェ」を一口試食されてもらった時の衝撃は今でも覚えており、それが自分にとってのナチュラルチーズとの本格的な出会いと断言できます。そして、それがきっかけで、ナチュラルチーズと真面目に向かい合うようになって行った訳です。

🌟プロセスチーズの進化

 上記にも言及したように、日本に紹介されてから半世紀以上が経過してプロセスチーズも大きく進化し続けています。プロセスチーズのメリットとしては、以下のような要素が挙げられます。

  • 安価であること
  • コンビニを含めて様々な小売店で手に入れやすい
  • 日持ちがする(賞味期限が長い)
  • 様々バリエーションがあり、用途に合わせて選べる選択肢が多い

 特に最後の項目については、各製造メーカーの開発努力やマーケティングのおかげで、常に新しいものが開発され新旧交代をしながら進化を続けています。特に添加物を用いた匂いや味つけのバリエーションの多さには目を見張るものがあります。  
 「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」にはプロセスチーズの定義がはっきり示されており、

定義:ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したもの
成分規格:乳脂肪分(乳脂肪量と乳蛋白量との和)40.0%以上、大腸菌群 陰性
認めれている添加物
 ①食品衛生法で認められている添加物
 ②脂肪量調整のためのクリーム、バター及びバターオイル
 ③味、香り、栄養成分、機能性及び物性を付与する目的の食品(添加量は製品の固形分重量の1/6以内とする。
  ただし、前②以外の「乳等」の添加量は製品中の乳糖含量が5%を超えない範囲とする。)

「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」より引用

とされています。つまり、この範囲であればいくらでも加工によりバリエーションが出来るわけですね。


 私にとっては、子供の頃は臭いだけで吐き気がしていたプロセスチーズは、本当に美味しいものが出回るようになりました。恐らく、今後もプロセスチーズのバリエーションはチーズメーカーの試行錯誤とマーケティングと共に増えて行くものと思われ、大いに期待したいところです。
 

🌟ナチュラルチーズとプロセスチーズの共存

 チーズ黎明期の日本に、その利便性と機能性により登場したプロセスチーズ。その後、日本人の生活様式の変化や輸入技術の進化により海外から輸入されるようになったナチュラルチーズ。プロセスチーズは言わばニセモノ、ナチュラルチーズこそが本物のチーズという捉えられ方をしていた時期もあったように思いますし、今でもそのような解釈をされている方もいらっしゃるかもしれませんが、私は全く別物と認識するのが好ましいように思います。
 ナチュラルチーズも伝統的なものばかりでなく各国、各地域で進化を続けていますし、プロセスチーズも上記の同様。それぞれ全く異なる利点と魅力があるし、用途によって全く異なる使い分けが出来ます。どちらも、それぞれの特徴を活かした進化と発展をして欲しいものです。

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