チーズプロフェッショナルへの道 その29       

 『チーズの教本』第3章 チーズを広める① チーズの販売

Cusco Peru- Mercado de Wanchaq- cheese seller

 『チーズの教本』の第三章はチーズの販売や普及に関する事が記述されています。そしてその一章はチーズ販売に関する事項が書かれています。

🌟 販売員の役割

🧀販売員は大切なパイプ役

 チーズには工場で大量生産するプロセスチーズと小さな規模の生産者がほぼ手作りで小ロットで生産するナチュラルチーズがあります。言わば手作りのハンバーグを提供する個人経営のレストランに対して、セントラルキッチンで送られてくる商材をマニュアルに従って処理して提供しているファミレスのような関係とも言えそうです。
 プロセスチーズには詳細な説明はあまり必要ありません。そもそも大手の会社の製品なので広告宣伝やHPなどプロモーション情報は充実していますし、大手流通との関係の中でスーパーやコンビニの棚に並ぶからです。
 一方のナチュラルチーズはそうは行きません。基本的に生産量が少ないし、大資本が背景にあるような工房は基本的にはないため情報を流通させる力が備わっていない事が殆ど。さらに、輸入品の場合は関税等の輸入コストが掛かり、為替の影響も受けるためどうしても単価を高めに設定しなければならない。
 それでもなお価値がある事をお客様にお伝えするのは基本的にチーズ専門店の販売員という事になります。従い、チーズ、とりわけナチュラルチーズの販売店の店員は、生産者と生活者を繋ぐ極めて大きな役割を担っていると言えます。

🧀多岐にわたるその仕事

 チーズの販売員のタスクは結構多いです。まず生物であるため管理は重要です。さらに接客、仕入れ、売上、財務、宣伝販促等対面の部分もバックヤード管理も全て販売員の業務範囲です。『チーズの教本』には例として以下のものが挙げられています。

  • 売上予算作成
  • 販売促進立案
  • 顧客管理
  • 衛生環境維持
  • 労務管理
  • 在庫管理、発注
  • 情報の収集と発信
🧀国産と輸入、チーズの流通方法

  ◉国産チーズの場合
   生産者 ☞ 卸 ☞ 小売 ☞ 生産者

  ◉輸入チーズの場合
生産者 ☞ 輸出業者 ☞ 輸入業者 ☞ 小売 ☞ 消費者

 チーズの輸入には空輸と船便がありますが、どちらもリーファー・コンテナ(冷蔵設備付きコンテナ)が必要です。
 一般に、空輸は早いがコストが掛かる、船便は安いが時間が掛かるという特徴があり、チーズの種類に合わせて使い分けられます。
 近年、冷凍技術が進み、I.Q.F(Individual Quick Frozen 個別急速冷凍)等により生食用のチーズも冷凍で輸入する事が可能になりました。

🧀徹底した管理が大切

 
【衛生管理】

 チーズは微生物汚染の危険性が高いため、
 1、雑菌混入の防止
 2、冷蔵管理(10℃以下)

は徹底する必要があります。またオーダーカットする際は「乳製品製造業」の許可が必要です。

【異物混入】

 店舗でカットをしリパックする場合は以下のような異物混入に注意が必要です。

  • 髪の毛等の人由来のもの
  • ナイフ等器具に付着したもの

【日常の管理】

 チーズのタイプにより管理の仕方が異なります。

 ◉フレッシュタイプ
  鮮度が重要なため賞味期限と在庫管理の徹底

 ◉シェーブル
  水が出やすいためやや乾燥気味に管理。状態維持のため毎日ラップを交換。

 ◉青カビ
  水が出やすいため適宜拭き取る必要があります。また直射日光を避ける工夫を要します。

 ◉ハード
  ショーケース内が乾燥しすぎないような工夫が必要です。油が付着するためラップも都度新しいものに交換する事が好ましいです。

◉プロセスチーズ
  法令で店舗でのチーズカットは行えない事になっていますが、それ以外の管理は特に必要ありません。

【在庫と発注】

 チーズに限ったことではありませんが、種類によって売れ行きを確認し欠品をしないように発注をかける必要があります。人気のある商品が品切れになっているような事を繰り返すと、店舗としての利益機会を逸すると同時にお客様の信用を失う事にも繋がりかねず、在庫管理と発注のタイミングは極めて重要な要素と言えます。
 ただチーズの発注の難しいところは、フレッシュチーズを中心に消費期限が長くない為、販売の予測を立てながら発注をしなければならない点です。

【賞味期限】

 一般消費者にはあまり正確に知られていませんが、食品の賞味期限とは美味しく食べられる期間を表し、消費期限は品質の保証が出来ない期間を表しています。すなわち、賞味期限は比較的長持するものにつけられ、消費期限はアシの早いものに記されます。
 チーズの場合はソフトタイプにしてもハードタイプにしても殆どの場合賞味期限が表示されます。

🌟 販売員に必要な工夫

🧀売り場に合わせた売り方をする

 販売店の立地やコンセプトによってその店舗に立ち寄るお客様の目的や価値観が変わるので、そのニーズにマッチした接客と対応をする事が好ましいです。

🧀売上目標に沿った販売促進

 店舗及び商品の広告やプロモーションは常に考慮する必要がありますが、チーズの種類の特徴に応じて、

  • 季節や行事
  • 消費されるシーン
  • 特定の国やメーカーの物を集める
  • 新たな食べ方の提案

といったあたりをポイントにしながら、昨今ではSNSを使ったメリハリを効かせた情報発信が好ましいと言えます。

🧀売り場の設備

 スーパーなど人が対応が出来ない場合は、陳列の方法やPOPなどを充実させるのが好ましいですが、販売員が対応できる場合は説明がしやすいような陳列の順序や配置をするのが好ましいと思われます。
 いずれにしても、ショーウィンドウからは見やすく、せめて商品の名前と主な特徴が分かるような値札は配置すべきです。

🧀それをぞれにふわわしい陳列方法

 チーズには上下が決まっています。ソフトタイプチーズの場合は、上下を定期的に反転させて形が崩れないようにする必要があります。

🧀陳列での注意点

 ナチュラルチーズの販売現場は、自然の雰囲気を出すために天然由来の物をPOPとして使用する傾向がありますが、虫の発生やカビの発生など人口のものに比べると管理リスクが高くなるため注意が必要です。

🧀販売員としての魅力

 「チーズ販売の基本は豊富な知識と豊かたな人間性」と「チーズの教本」は断言しています。豊かな人間性を備えるのは中々難しいと思いますが、チーズを愛し、心からお客様にお勧めしたい気持ちはプロフェショナルとして持つ必要があると思います。

🧀セールス・トーク

 多くの知識があると、お客様に求められていない事まで言及してしまうというリスクには注意が必要です。あくまでも肝心な事は知識の披露ではなくいかにお客様を喜ばせるか、という事に尽きるはずです。

🧀チーズのコンサルティング・セールス

 営業の基本はお客様のニーズを正確に掴み取ること。そのためにはまずは聞き上手でなければなりません。教本には以下のようなニーズがリストされています。

  • 個別のチーズの風味やテクスチャー
  • 商品知識
  • 合わせる飲み物と副食材
  • 季節やテーマ
  • 食べ方
  • 熟成状態
  • 賞味期限
  • 予算
  • シチュエーション
🧀チーズのカット

 販売員は美しくロスの少ないカットの基本を知っておく必要があります。

🧀アフターフォロー

 常連のお客様になって頂くためにも、販売後のフォローもできる限り行う必要があります。

🌟 日本の食品表示項目

 2009年に内閣府に設置された消費者庁によって2015年4月に「食品表示法」とそれに基づく「食品表示基準」が成功され包括的かつ一元的な法律になりました。

🧀チーズの一括表示
❶種類別ナチュラルチーズ
❷原材料名生乳、食塩 / アナトー色素
❸内容量180g
❹賞味期限2024年11月11日
❺保存方法要冷蔵10℃以下
❻原産国名フランス
❼輸入者ふぉるまじお株式会社 東京都港区芝浦 〇丁目ー△

 ❶種類別又は名称:ナチュラルチーズかプロセスチーズの場合は「種類別」と記されリコッタ(乳製品を主要原料とする食品)とチーズフードの場合は「名称」と記されます。
 ❷原材料名:乳種や添加物の他、チーズフードと乳主原の場合は無脂肪固形分と乳脂肪分を表示します。また、原材料全体に占める重量の割合の多いものから順に表示します。
 ❸内容量:グラム、キログラム単位で記載
 ❹賞味期限:年月日の順に表記し、賞味期限が3ヶ月を超える場合は年月のみで構いません。
 ❺保存方法:「食品表示基準」に基づき適切な方法を表記。
 ❻原産国名:輸入後にカット等の加工をした場合にも原産国を記載。
 ❼輸入者:表示に責任があるものの氏名又は名称及び住所を記載。

🧀食品添加物
  • 着色料:アナトー色素等
  • pH調整剤:クエン酸、乳酸等
  • 増粘安定剤:ゼラチン等
  • 保存料:ソルビン酸、ナタマイシン等
  • 香料:トリュフ香料等
  • 調味料:グルタミン酸ナトリウム等
  • 乳化剤:クエン酸ナトリウム等
  • 酵素:卵白リゾチーム
  • 製造用剤:セルロース
🧀アレルギー表示

 ◉特定原材料:発症数や重篤度などから表示の必要性が高いと考えれるもの。

  • えび
  • かに
  • 小麦
  • そば
  • 落花生
  • くるみ

 ◉特定原材料に準ずるもの:法的な義務が無いもの。

  • アーモンド
  • あわび
  • いか
  • いくら
  • オレンジ
  • カシューナッツ
  • キウイ
  • 牛肉
  • ごま
  • さば
  • 大豆
  • 鶏肉
  • バナナ
  • 豚肉
  • もも
  • 山芋
  • りんご
  • ゼラチン
  • マカデミアナッツ
🧀栄養成分表示

 2015年4月1日に施行の食品表示法により一般用加工食品に栄養成分表示が義務付けられました。

エネルギー 294kcal 

たんぱく質 6.7g

脂質    27.9g

炭水化物  3.9g

食塩相当量 0.1g

カルシウム 190mg (任意項目)

🧀容器包装の識別表示

 容器包装に材質を示す「識別マーク」を表示する事が義務化されています。

🌟 ヨーロッパのラベル表示

この章の内容の多くが前述の部分と重なるため以下ページで代用。

チーズプロフェッシャナルへの道 その12

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