脅威の守備範囲を誇るミモレット
日本で不動の人気と知名度を誇るミモレット(Mimolette)。どんなお酒にも合いやすいこのオールマイティ感は唯一無二。
ミモレットはオレンジ色が特徴のセミハードタイプチーズ。日本でも熟成が6ヶ月から18ヶ月と幅広いタイプのものが、チーズ専門店ならずともスーパーにも出回っています。しかも一般的にはそれほど高価ではないので気軽に入手が可能。
ナチュラルチーズの世界において、コンテやパルミジャーノ・レッジャーノに匹敵する本格感とフレンドリー感の共存。今回は、ミモレットの熟成の長さの違う4種のミモレットをテイスティングしながらそれぞれのお酒とのマッチングを検討します。
🌟購入データ
- ジュンヌ 購入日:2024年2月 購入店:日進 東麻布店
- ドゥミ・ヴィエイユ 購入日:2024年2月 購入店:日進 東麻布店
- ヴィエイユ 購入日:2024年2月 購入店:ボンラパ 麻布十番
- エクストラ・ヴィエイユ 購入日:2024年2月 購入店:フェルミエ白金台店
🌟ミモレットの基本スペック
日本ではフランス産のミモレットを頻繁に目にしますが、ミモレットの本家はオランダと言われており、現地ではcommissiekaas(コミッシーカース)と呼ばれています。なお、Kaas(カース)オランダ語でチーズを意味します。
フランスのミモレットは熟成度合いによって名前が以下のように変わります。
- 2-6ヶ月 ジュンヌ
- 6-12ヶ月 ドゥミ・ヴィエイユ
- 12-18ヶ月 ヴィエイユ
- 18-24ヶ月 エクストラ・ヴィエイユ
ミモレットの見た目の特徴としては生地の鮮やかなオレンジ色。この色はアナトー色素(ベニノキ)で着色されています。また、熟成が一年を過ぎるとシロンと呼ばれるダニが表皮にカビを餌にしながら繁殖します。シロンはカビの減少させ、ミモレット独特の熟成味を作り出すのに大きな役割を果たします。またダニではありますが食しても害はありません。
生産国 | 🇳🇱オランダ 🇫🇷フランス |
地域 | 🇳🇱特定地域なし 🇫🇷ノルマンディー地方(元はフランドル地方) |
タイプ(CPAのグループ分けによる) | セミナード/ハード |
乳種 | 🐮牛 |
熟成期間 | 6ヶ月〜24ヶ月 |
MS/ES(固形分中に於ける脂肪分量) | 40% |
🌟テイスティングシート
最も熟成の浅い6ヶ月熟成のミモレット ジュンヌのテイスティングシート。
外観 | 外皮 | カットされていたため無し |
中身 | 濃いオレンジ色。目の詰まったキメの細かい生地。 | |
テクスチャー | 触感 | 若干の湿り気。硬く指先で曲げると少し粘った後折れる。 |
食感 | 滑らかな口当たりと歯応え。口の中にまとわりつく粘り気も感じる。 | |
風味 | 香り | 若いセミハードらしい乳酸菌の香り。 |
味 | 強めに感じるコクと旨み。さらに穏やかな塩気。若干の甘みも感じる。 |
二番目に熟成の浅いミモレット ドュミ ヴィエイユのテイスティングシート。
外観 | 外皮 | カットされていたため無し。 |
中身 | 濃いオレンジ色。キメの細かい生地の中に所々チーズアイも見える。 | |
テクスチャー | 触感 | 硬く指先でポキっと折れる。 |
食感 | 滑らかな口当たりと歯応え。 | |
風味 | 香り | うっすら感じる乳酸菌とナッティな香り。 |
味 | 深いコクと旨み。さらに穏やかな塩気と甘み。 |
熟成の進んだミモレット ヴィエイユのテイスティングシート。
外観 | 外皮 | 白っぽくやや厚めの外皮。カサカサとしたテクスチャー。 |
中身 | やや白っぽいオレンジ色。ところどころ白っぽい斑点のようなものも見える。 | |
テクスチャー | 触感 | 硬く指先でポキっと折れる。 |
食感 | 気持ちの良い歯応えと舌の上で感じる生地の滑らかさが特徴。 | |
風味 | 香り | 軽く感じるナッティな香り。 |
味 | 深いコクと旨みに加え、若干の苦味、甘み、を感じる。 |
最も熟成の進んだミモレット エクストラ ヴィエイユのテイスティングシート。
外観 | 外皮 | 白っぽくやや厚いゴワゴワとした表皮。 |
中身 | 少し白味がかったオレンジ色。 | |
テクスチャー | 触感 | 水分が少なく硬く、指先ですぐに折れる。 |
食感 | 気持ちの良い硬さの歯応え。生地は歯につく粘り。若干感じるジャリジャリ(アミノ)感。 | |
風味 | 香り | ナッティ。 |
味 | 旨み、苦味、甘み、コク、塩気が高い次元でバランスしている。 |
🌟お酒とのマッチングの検討
今回、若いジュンヌから熟成の進んだエクストラヴィエイユまで4つのミモレットを試しました。一点、重要な前提はメーカーが変わると色味や生地の状況が変わるという事。今回、ジュンヌとドュミヴィエイユは同じところで同時に購入したので、メーカーも同様と思われますが、他の店で購入した2つとは明らかにオレンジ色の濃さが違っていました。これは恐らく熟成の度合いの問題ではなく、製造時のオレンジ色着色の原料となるアナトー色素の性質或いは料によるものと思われます。
ただし、熟成期間の違いによる風味の違いは明らかで、熟成が進むほど複雑味が増します。ジュンヌからすでにコクと旨みは強く、非常に「おつまみ」感の高さを感じます。従い、ワインよりも日本酒はどのようなタイプでも相性が良い事が想像されます。また、ビール、ウィスキー(ハイボール)には間違いなくフィット。ワインは白ならほぼフルカバー。特にスパークリングには特に合うはずです。赤は、ミモレットの熟成度合いによって相性が異なる感じ。熟成が進んだものにはフルボディのタイプもマッチしそうです。
🌟マッチングスコア
ミモレット ジュンヌのマッチング
赤ワイン(フル) | × | 赤ワイン(ライト) | ○ |
白ワイン(辛め) | ◎ | 白ワイン(甘め) | ◎ |
日本酒(淡麗) | ○ | 日本酒(芳醇) | ○ |
ビール | ◎ | ウィスキー | ◎ |
バーボン(ソーダ割り等) | ◎ | ラム(ソーダ割り等) | ○ |
テキーラ(ソーダ割り等) | ◎ | ジン(ソーダ割り等) | ○ |
ウォッカ(ソーダ割り等) | ○ | 芋焼酎 | ◎ |
麦焼酎 | ○ | その他 | ー |
ミモレット ドュミヴィエイユのマッチング
赤ワイン(フル) | △ | 赤ワイン(ライト) | ○ |
白ワイン(辛め) | ◎ | 白ワイン(甘め) | ◎ |
日本酒(淡麗) | ○ | 日本酒(芳醇) | ○ |
ビール | ◎ | ウィスキー | ◎ |
バーボン(ソーダ割り等) | ◎ | ラム(ソーダ割り等) | ○ |
テキーラ(ソーダ割り等) | ◎ | ジン(ソーダ割り等) | ○ |
ウォッカ(ソーダ割り等) | ○ | 芋焼酎 | ◎ |
麦焼酎 | ○ | その他 | ー |
ミモレット ヴィエイユのマッチング
赤ワイン(フル) | △ | 赤ワイン(ライト) | ○ |
白ワイン(辛め) | ◎ | 白ワイン(甘め) | ◎ |
日本酒(淡麗) | ○ | 日本酒(芳醇) | ○ |
ビール | ◎ | ウィスキー | ◎ |
バーボン(ソーダ割り等) | ◎ | ラム(ソーダ割り等) | ○ |
テキーラ(ソーダ割り等) | ◎ | ジン(ソーダ割り等) | ○ |
ウォッカ(ソーダ割り等) | ○ | 芋焼酎 | ◎ |
麦焼酎 | ○ | その他 | ー |
ミモレット エクストラヴィエイユのマッチング
赤ワイン(フル) | ○ | 赤ワイン(ライト) | ○ |
白ワイン(辛め) | ◎ | 白ワイン(甘め) | ◎ |
日本酒(淡麗) | ◎ | 日本酒(芳醇) | ◎ |
ビール | ◎ | ウィスキー | ◎ |
バーボン(ソーダ割り等) | ◎ | ラム(ソーダ割り等) | ○ |
テキーラ(ソーダ割り等) | ◎ | ジン(ソーダ割り等) | ○ |
ウォッカ(ソーダ割り等) | ○ | 芋焼酎 | ○ |
麦焼酎 | ◎ | その他 | ー |
🌟ミモレット 推奨の食べ方
おつまみ感の強いミモレットは、そのまま小さくカットしてお酒のアテにするのが一番推奨の食べ方だと思われます。コンテ等、他のハードチーズと合わせて、食感や風味の違いを食べ比べながら感じるのも面白いです。特にミモレットは色味も他のハードチーズとは異なり特徴的なオレンジ色をしているので、ボードに並べると色味の違いも楽しめます。
🌟ミモレット Plus!
ミモレットの特徴を端的に表すならコクと旨み、そして印象的なオレンジ色です。個性的で独特な特徴を持つこのハードチーズは、実際に様々なお酒で検証してみても非常に守備範囲が広くかなりのバリエーションの幅で楽しむ事ができます。
このようなチーズには音楽で言えばフュージョンのイメージが重なります。フュージョンと言っても幅広いわけですが、この場合はやはりジャズがベースになっているグルーヴィーなサウンドを持って来たいところです。そこで今回は、ジャズ&フュージョンの歴史の中でも圧倒的な存在感を光を放ち続けるV.S.O.P. by ハービー・ハンコックの名盤をピックアップします。
V.S.O.P.クインテット・ライブ・イン・ジャパン/熱狂のコロシアム
このアルバムは元々はヴァイナル2枚組で、収録時期は1977年、場所は今は無き田園コロシアムで行われたライブアンダースカイの時の演奏です。出だしから終わりまで非の打ち所がないの無い内容で、参加しているパーソネルの演奏も素晴らしい。特にこの頃のハービーにとって存在感の大きかったワー・ワー・ワトソンの独特なサウンドは時代を超えて新鮮に響きます。また、その後は映画ゴーストバスターズでポップススターの仲間入りをしてしまったレイ・パーカー・ジュニアがカッティングギターで物凄く良い仕事をしています。
グルーヴィーなV.S.O.P.を聴きながら各種ミモレットと白ワイン。音楽も酒も止まりません。誰かー。