チーズプロフェッショナルへの道 その11       

 『チーズの教本』第 1 章 その他のチーズの形態  

 『チーズの教本』第1章の最後は、プロセスチーズの作り方からその包装形態と分類が書かれており、その後に国内で通常手に入る「その他チーズの形態」がコメントされています。プロセスチーズについては、すでに「チーズプロフェッシャナルへの道 番外編」という記事を挙げているので、ここでは「その他のチーズの形態」について書く事とします。

🌟ロングライフチーズ(放送後加熱殺菌済ナチュラルチーズ)

 ロングライフチーズとは、熟成させたチーズを長期保存用に加工したナチュラルチーズです。
 熟成させたナチュラルチーズをアルミ缶やプラスチック容器などに入れ密封し、高圧釜で加熱殺菌。これにより、熟成に寄与して来た未生物は死滅し、酵素も失活します。そのため熟成はそれ以上進まず、約1年という長い賞味期限を実現します。
 ロングライフチーズの発祥は1900年頃と古く、カマンベールの缶詰化にドイツで成功した事に端を発したとされています。
日本の場合は、1960年代からやはりカマンベールの缶詰の製造販売が行われ始めました。
 定義としては、加熱して微生物を死滅させてしまいますが、乳化の工程が無いためプロセスチーズではなく飽くまでナチュラルチーズのカテゴリに入る事になります。

🌟シュレッドチーズ

 シュレッドチーズとは、一般にチーズを回転式のシュレッダーに掛け細かく短冊状にしたものを言います。一般的には、ゴーダやチェダーのようなハードチーズやアジアーゴのようなセミハードチーズが使用されます。また、ナチュラルチーズとプロセスチーズを混合したものも市販されています。
 チーズをシュレッドする主たる目的は、ピザやパスタなどの料理で加熱して溶かすためですが、我が国では1970年ごろのピザブームに乗って爆発的に普及しました。
 現在市販されているシュレッドチーズは、結着防止のためのセルロースが添加されている場合が多く、また酸化防止剤や安定剤などが添加されていることもあります。また、ガスバリア性の高いビニールに充填されて脱酸素剤やガス置換によって品質が保持されるように工夫されています。

🌟粉チーズ

 粉チーズとは、チーズを細かく砕いて粉末状にしたものを指します。日本では商品名に「パルメザン」とついた粉状のチーズが広く普及していますがそれが粉チーズの定番です。これは、本来は(スーパー)ハードチーズの代表でもあるパルミジャーノ・レッジャーノをグラインドしたものというイメージで付けられた名称でしたが、現在ではそれが粉チーズの代名詞に近いような位置付けの言葉になっています。
 粉チーズは、様々な料理に後から振りかけて使えてとても利便性が高いため、日本でも各家庭に必ず常備されるほど広く普及ているチーズの一形態です。
 原料にはナチュラルチーズもプロセスチーズもどちらも使われますが、当然ながらナチュラルチーズのハードチーズを用いたものの方が圧倒的にコクがある風味を持ちます。

🌟冷凍流通チーズ

 チーズは冷凍すると組織に影響を与え、解凍しても元の風味に戻らない事が多いため殆ど冷凍することはありませんが、一部加熱を前提にしたチーズ(cf. ピザ用に使うモッツァレッラ)などは業務用として流通していました。ただし、最近はI.Q.F.(Individual Quick Frozen)=個別急速冷凍の技術開発により、モッツァレッラやブッラータの様なフレッシュタイプやゴルゴンゾーラのようなカビタイプのチーズでも用いられる様になっています。

🌟スモークチーズ

 かつてはチーズを燻液に漬けて燻製の色と香りだけを付けてスモークチーズと謳っているものが殆どでしたが、最近は静電気の力を使って煙の粒子をチーズに定着される電気燻煙の技術を使ってソフトチーズにも燻製の香りがしっかりついたスモークチーズが出来るようになりました。昨今ではブッラータようなフレッシュチーズでもスモークバージョンが出ているほどバリエーションが増えています。

🌟チーズ類似製品

 🧀チーズフード
  「チーズフードとは乳等省令にいう乳又は乳製品を主原料とする食品であって、一種以上のナチュラルチーズまたはプロ
 セスチーズを粉砕し、混合し、加熱溶融し、乳化して作られるもので、製品中のチーズ分の重量が51%以上のものという」
 とチーズ公正競争規約の中で定義されています。また、次の三つを添加しても良いとされています。

  1. 食品衛生法で認められている添加物
  2. 味、香り、栄養成分、機能性及び物性を付与する目的の食品(添加量は製品の固形分重量の1/6以内)
  3. 乳に由来しない脂肪、たんぱく質または炭水化物(添加量は製品重量の10%以内)


 🧀乳又は乳製品を主原料とする食品(乳主原)
  見た目はプロセスチーズやチーズフードの様であるけれど、法の定義上はそれらに該当しないものを指します。例えば、

  • チーズスプレッド
  • チーズフォンドュ
  • 乳化剤を使用しないプロセスチーズ

などが挙げられます。


 🧀リコッタ
  リコッタとはホエイを加熱し煮詰めて固まった物を言い、味としてはほんのり甘く酸味もある爽やかな食品です。牛のリ
 コッタ以外にも水牛のリコッタもたまに見かけます。
 リコッタは、製造における熟成工程がなく体裁としてもフレッシュチーズの様ではありますが、乳糖省令におけるチーズの
 定義には当てはまらないため、乳主原にカテゴライズされます。

リコッタ フレッシュ

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