チーズプロフェッシャナルへの道 その0
日本のチーズに関する資格の最高峰「チーズプロフェッショナル」を目指してみた
還暦を目前にしてチーズプロフェッショナル資格取得を目指しています。
2023年の3月から本格的に勉強を始め、7月に行われた1次試験を首尾よく通過するも、10月の2次試験で見事にズッコケ、来年の2次試験再受験までの1年をチーズ”セミ”プロフェッショナルとして過ごす事に。
ブログ「チーズプロフェッショナルへの道」は、チーズの魅力に目覚めてしまったオヤジがうっかりチーズプロフェショナルを目指すに至ってしまった経緯とこの半年の受験勉強及び試験当日の苦闘の状況を開示しつつ、来年の再受験への対策を日記的に記録して行きます。
その1回目の本記事は、チーズプロフェッショナルという資格の基礎情報を
🌟チーズプロフェッショナルってなに?
そもそも「チーズプロフェッショナル」資格とは何でしょうか?これは、NPO法人日本チーズプロフェッショナル協会が認定する言わば日本のチーズ版ソムリエ資格です。この協会は略称でC.P.A.と記されますが、これは『Cheese Professional Association』の頭文字をとったものです。
C.P.A.は、2000年に日本におけるチーズの正しい知識の伝導と普及を目的に発足した非営利団体で、チーズプロフェッショナル資格を中心とした各種認定試験の実施や、様々セミナーやイベントを積極的に行っている組織です。その公式HPの中でチーズプロフェッショナルとは、
チーズの魅力を発信する「チーズの伝え手」となる人です。
https://www.cheese-professional.com/
と定義されています。つまり、ただ単にチーズが好きで詳しい人、というよりもチーズの魅力広める言わばインフルエンサー的な役目が主たるミッションとして予定されている資格という事が言えますね。ただ一方で、
プロフェショナル」と銘打っているので、チーズに携わるプロたちの団体と思われるかもしれませんが、そうではありません。チーズを愛し、その魅力を広めたいと思うすべての方々のためにある団体です。
https://www.cheese-professional.com/
とも記されており、職業的にチーズに携わっている人だけではなく、チーズに思い入れがある人であれば誰でもそのなれる可能性があるという事が明記されています。
2023年現在のチーズプロフェッショナル有資格者は全国で約4,000人程度。一般社団法人日本ソムリエ協会(J.S.A. )のワインソムリエの有資格者約4万人と比較するとほぼ10分の1。ただし、こちらは1969年発足という30年ほど長い歴史がある事を考えると、チーズプロフェッショナルは一般認知を含めてまだまだこれから発展の余地がある資格という事が言えると思います。
🌟チーズプロフェッショナル試験の概要と難易度
日本には、チーズに関する幾つかの資格試験がありますが、その中でもチーズプロフェショナルは最高峰の資格という位置付けです。試験は年一回で、毎年7月に行われる1次試験と10月に行われる2次試験の2回を通過した者だけが「チーズプロフェッショナル」をと称する事が許される資格を得ることが出来ます。なお、1次試験に合格して2次試験で落ちた人(ハイ!私です)は、向こう2年間に関して1次試験免除で2次試験から受験する事ができます。
では、その難易度はどの程度なのでしょうか?この5年の合格率推移を一覧表にまとめてみました。
実施年 | 1次試験受験者 | 1次合格者数 | 1次合格率 | 2次試験受験者 | 2次合格者数 | 2次合格率 |
2019年 | 539 | 268 | 49.7% | 343 | 172 | 50% |
2020年 | 347 | 217 | 62.5% | 292 | 122 | 41.7% |
2021年 | 403 | 176 | 43.7% | 266 | 124 | 46.6% |
2022年 | 442 | 241 | 54.5% | 296 | 99 | 33.4% |
2023年 | 388 | 186 | 35.1% | 241 | 86 | 35.7 % |
ご覧頂いてお分かりの通り、何やら年々難易度が上がっているようです。特に本年2023年は、2次試験合格者(つまりチーズプロフェッショナル資格取得者)がたったの86人。1次試験からのストレート合格率は約20%という低さ。いつの間にかちーずプロフェッショナルはそこそこの難関試験になってしまいました。
🌟チーズプロフェッショナル1次試験は7月
では試験の形式と中身を見てみましょう。
1次試験は7月の末頃行われますが、経験的には、チーズプロフェッショナル1次試験の基本的なコンセプトは、「チーズに関する基礎的な知識を広く習得している」事が試されるのだと思います。C.P.A.も自身が発行する『チーズの教本2023-2025』の内容を網羅すれば受かる内容になっていると公表しており、いわゆる座学による基礎知識の習得を求めている事が明らかにされています。
ただし、1冊マスターすれば良いはずのこの『チーズの教本』。これが恐ろしく内容が濃い。250ページほどの大判の本で、ふんだんに写真やフローチャートなどが盛り込まれているため、パッと見とてもフレンドリーな印象を受けるものの、実際に読み込んでみると全く無駄なページが無く、ほぼ全てのページがマーカーだらけになります。受験仲間の友人数人所有の本書を見せてもらいましたが、誰のものもほぼ同様でマーカー&手書きの書き込みで埋め尽くされている状況。
大まかに内容を記すと
- 歴史
- 原料に関する基礎情報
- 各国の規格の状況
- チーズの製造方法
- 各国の主たるナチュラルチーズの名称及び基礎スペック
- 我が国のチーズの各種データ
- 販売に関する基本事項
- チーズカットの専用道具とカット方法
- チーズの栄養成分
- 世界の主なチーズ料理紹介
という恐ろしく広範囲な内容となっており、一般的なカテゴリーとしても、歴史、化学、地理、マーケティング&プロモーション、料理、さらに法律と言った文系から理系までの広い範囲の情報の理解と記憶が必要となっております。
特に、チーズは乳を固めて作る食品であるので、その凝固のメカニズムから熟成に関するあたりの基礎情報は、理解するのもなかなか骨が折れます。
1次試験は、1時間の試験で全て筆記式(一部選択肢問題あり)。筆記は鉛筆かシャープペンでボールペンは不可。
その試験の70%が合格ラインとされており、それを通過した人だけが2次試験に駒を進める事が出来ます。結果は、試験後1週間後ほどにまずC.P.A.のHP上で合格者の受験番号が発表され、その後郵送で自宅に通知が送られてきます。
ただ、試験問題の答えは公表されないため、自分がどれほどの点数が取れたのかは何となくしか分かりません(コレ、何とかならないですかねぇ?C.P.A.さん)。かく言う私も、何となく通っちゃったと言う感触だったので、実際には70%ギリギリのところで引っ掛かったのだと思っています。
🌟チーズプロフェッショナル2次試験は10月
1次試験と通過すると10月の初旬に行われる2次試験に進みます。1次試験がチーズに関する基本知識の確認が問われるのに対して、2次試験はテイスティングを含めチーズのプロとしての実践的な知識やコミュニケーションの方法が問われます。従い、1次試験の内容は決まった答えがある設問が殆どであるのに対して、2次試験は自分で考え、オリジナルの回答を作る設問が多くなります。ただし、全体の1/3程度は1次試験と同様の基礎知識を問う問題も出題されるため、『チーズの教本』をベースとした基礎的な勉強も1次試験通過後も継続する必要があります。実際に、2023年の2次試験には1次試験と全く同じ問題が出題されていました。恐らく、1次試験の正解率が低く、かつ重要事項とC.P.A.が判断して再出題したのだと推測されます。ちなみに、その問題の内容は牛乳からチーズが製造される場合の歩留り率を2種のチーズについて問うものでした。
テイスティングの出題形式は、小さくカットされた数種のチーズが試験会場のデスクに袋に入れた形で設置されており、試験開始とともに開封してテイスティングしながら回答用紙に記述して行きます。チーズのテイスティングの基本は、
- 外観(表皮、中身)
- 触感
- 食感
- 臭い
- 味
の各項目について言語化して記述します。試験年度によっては、そのチーズの名前も回答させる事があるようですが、2023年のテイスティングについては、アイテムは2種で名称を回答させる設問はありませんでした。
一方、2023年に出題されたより実践的な問題としては、
- チーズのカットの仕方(青カビ)実際に描く
- チーズカットの道具
- カットしたチーズの包装に際しての注意事項
- プレゼントに選ぶチーズのチョイス
- 熟成の異なるチーズの推奨の食べ方
- 自らがセミナーを行うのプランニング
と言った事項が聞かれました。チーズ販売の店舗の販売員の立場になったつもりで想像を膨らませながら回答を捻り出さざるを得ない部分も多く、チーズのプロらしい態度や対処方法などを記述する必要があります。
このような問題の多くに正解は無く、その妥当性が評価されたと思われます。
🌟まとめ
以上書いてきたように、
1次試験=基礎知識
2次試験=実践的な力
が試される試験構成になっている訳ですが、総合して考えるとチーズの魅力を発信する「チーズの伝え手」の資格があるかどうかを評価するのによく検討された試験になっていると感じました。
2023年3月から準備を始めて初受験した私ですが、1次試験は通ったものの2次試験を通過できなかった自分には「チーズの伝え手」としての実質的な資格がまだ備わっていないのだろうと納得が行く結果となりました。
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